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今回は、イメージで理解する望遠鏡 シリーズの第二弾です。望遠鏡のピント合わせに役立つバーティノフマスクのしくみを、数式を使わずイメージで紹介します。
バーティノフマスクは、柵のような隙間(スリット)を複数方向に配置した円盤で、上図のように望遠鏡の開口部に取り付けて使用します。
透明なものや、スリットの形状がより複雑なものなど、いくつか種類がありますが、今回は最もシンプルな3方向のスリットが入ったタイプを例にお話ししていきます。
こちらは、バーティノフマスクをつけて撮影した星の画像です。
バーティノフマスクをつけると、星の周囲に光の線(光芒)が発生します。ピントが合っていないと、図の上側のように光芒がずれた状態になり、ピントが合うと、図の下側のように光芒が一点で交差した状態になります。
光芒の発生
星の光に光芒が発生するのは、回折現象によるものです。星からの平行な光が、格子のエッジで回り込んで広がり、かつ隣の格子を抜けた光と干渉を起こします。
前回の望遠鏡のしくみで紹介したように、とある一つの星からの光でも、望遠鏡に対しては平行光として開口部全体に入ってくるので、回折・干渉といってもイメージが少し難しいかもしれません。
そこで、まずはその多数の平行光のうち一本を取り出して考えてみたいと思います。身近な物で、一本の平行光を簡単に再現できる道具は、レーザーポインタです。レーザー光は平行光なので、懐中電灯のような拡散光とは違い、空間を拡がることなく進んでいきます。
このレーザーを、バーティノフマスクに当てると、向こうの壁に光芒が浮かび上がります。
レーザーポインタを当てた場所の、スリットの向きによって、異なる向きの光芒が発生するのが分かります。光芒の向きは、スリットの方向に直角な方向になります。
望遠鏡の中を進む光芒
星からくる光は、バーティノフマスクを通り、スリットの向きに応じた、3方向の光芒を伴って進んでいきます。
望遠鏡の下半分を通る光線は、縦向きのスリットを通るので、それと直交する水平方向の光芒を伴って進みます。
望遠鏡の上半分を通る光線のうち、その半分は20°傾いたスリットを通り、残りの半分は−20°傾いたスリットを通ります。それぞれに直交する光芒が発生するため、これら2種類の光芒を合わせると、X形状の光芒が発生することになります。
それでは次に、星から来る複数の光線について考えます。ここでは、望遠鏡の中心断面を通る光に注目して、考えてみたいと思います。下のアニメーションは、撮像素子の位置を動かして、ピント合わせをしているときのようすです。6本の光線は、いずれも同じ一つの星から来た光です。
ピントが合っていないという状況は、大きく以下の二種類に分けられます。
一つ目は撮像素子が望遠鏡の中心に近すぎる場合です。このとき、望遠鏡の上半分を通ったXの光芒を伴う光線は、画面中心から右にずれます。下半分を通った光線は、逆に左にずれます。
二つ目は撮像素子が望遠鏡の中心から遠すぎる場合です。このときは、先ほどとは反対に、望遠鏡の上半分を通ったXの光芒は、画面中心から左にずれます。下半分を通った光線は右にずれます。
ピントが合った場合だけ、ちょうど光線が一点で交わり、光芒もそれぞれの中心で交わることになります。
パーティノフマスクがない場合には、星のボケ具合をみながら、ピントを調整することになりますが、これはなかなか難しいです。
ピントが合った時に、星が完全に点になってくれればまだ分かりやすいのですが、実際には大気の揺らぎや、収差、回折、視力の影響で、完全な点にはならず、ある程度大きさが残ってしまうため、ピンボケと完全には区別できません。
バーティノフマスクを使えば、ピントのずれを光芒の交点のずれに変換することができるので、これらの影響とは独立に、ピントを合わせ込むことができます。
今回の内容は以上です。また次回もお楽しみに。
補足
今回は簡単のために、望遠鏡の中心平面を通る光線だけを考えました。実際には、光線は望遠鏡の中心断面以外からも入ってくるので、ピントがずれている時の光芒は、画面の中で上下左右にボヤけることになります。ただ、今回の2次元のイメージを掴むことができれば、その応用で考えることができます。
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