反射望遠鏡が星を写すしくみ【2/2】

エンサイカフェへようこそ。

今回は、前回に続いて、ニュートン式望遠鏡の仕組みを解説します。

前回の内容で、星からの光は平行光であり、異なる星から届く光は、望遠鏡に入ってくる光の角度が違うということを説明しました。

今回は、その光がどのようにしてCMOSセンサに届けられるのかを、数式を使わずに、イメージで説明します。

なぜ望遠鏡(鏡やレンズ)が必要か

まず、望遠鏡なしで、CMOSセンサを夜空に向けたらどうなるかを考えてみましょう。

星からの光は細い一筋の光線ではなく、地球全体に降り注ぐ平行光です。そのため、CMOSセンサを空に向けただけでは、センサ全体に星の光が均等に当たってしまい、輝く星の像は得られません。また、他の星からの光も角度が違うだけで、センサ全体に降り注ぐため、星々の光を区別することができません。

CMOSセンサを直接空に向けたとき

人間の目(網膜)が、レンズ(水晶体)なしには景色を見れないのも同じ理由です。

一点の “星” として感知するためには、これらの平行光を、センサ上の一箇所に集める必要があります。

光がCMOSに届くまで

それでは、望遠鏡の中で、どのようにして光が一点に集まるのかを見てみましょう。

この図は、望遠鏡を縦に真っ二つに割った時の断面です。副鏡がない状態の、星からの光の道筋を表しています。

ニュートン式望遠鏡の主鏡は、理想的には放物面という形をしています※1。放物面とは、中学数学で習う二次関数をくるっと回してできる面のことです。

放物面の鏡には面白い特徴があり、正面から入ってきた平行光を、上の図のように一点に集めることができます。この点を焦点と呼びます。また、鏡から焦点までの距離を、焦点距離と言います。放物面が大きく曲がっているほど、光は強く曲げられるので、焦点距離は短くなります。この焦点に、CMOSカメラをおけば、星からの光は一点に集まり、画像の中央に明るい星の像が浮かび上がります。

ただ、このままでは、光が入ってくる経路にセンサを置かなければなりませんし、目で観察しようとした時には、自分の顔が邪魔で星からの光が望遠鏡に入らなくなってしまいます。

そこで、ニュートン式望遠鏡は、副鏡を配置することで、光の方向を90度曲げて、焦点を望遠鏡の側面に持ってきています。このようにしても、光は先ほどと同じように一点に集まります。

これで、望遠鏡の正面にある星が、CMOSカメラに写るしくみがイメージできたと思います。

では、望遠鏡を向けた方向から、少し上にズレた角度にある星の光はどうなるでしょうか。

1.3度の角度で入射した光の道筋

このときには、焦点の位置が変わり、画像の中心から左にズレたところに、星の像が得られます。また、逆に少し下の角度にある星の光は、画像の中心から右にずれたところに集まります。

-1.3°の角度で入射した光の道筋

このように、焦点の場所は、望遠鏡に入ってくる光の角度によって変わります。

そのため、CMOSセンサを使った星空撮影(直焦点撮影)において、望遠鏡は「星からの光の “角度” を、センサ上の “位置” に変換する装置」であると言えます。※2


ニュートン式望遠鏡が星を写すしくみ、理解できましたでしょうか。分かりにくいところがあればコメントで教えてください。

今後も、「イメージで理解する望遠鏡」シリーズとして、収差のしくみ、ピント合わせのしくみ、などをたくさんの図を使いながら紹介できればと思っています。


付録

今回お見せした光の道筋は、Excelツールで表現しています。焦点距離やセンサの位置を変えて実験できるので、Excelを持っている方は是非ダウンロードして遊んでみてください。

(ツールの使用は自己責任でお願いします)

今回の内容はここまでです。

読んでいただきありがとうございました!

※1 市販品では、放物面ではなく球面の主鏡が使われているものもあります。これは、放物面の鏡の加工が難しいためです。焦点距離が長い時には、球面と放物面の形はほぼ一致するため、大きな問題にはなりません。

※2 今回は直焦点撮影について説明しましたが、目で望遠鏡を覗く場合は、接眼レンズが追加され、もう少ししくみが複雑になります。このときには、望遠鏡は「星からの光の角度を増幅する装置」となります。ただし、この場合においても、望遠鏡と人間の目の水晶体を合わせて一つの装置と捉えれば、「星からの光の角度を、網膜上の位置に変換する装置」と言えます。


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